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勝ちながら育成する難しさ【 5月3日 vsドラゴンズ】

試合情報

ベイスターズ 3 - 7 ドラゴンズ

6回裏 二死1,2塁の場面

バッター伊藤裕季也のところで、代打藤田

目の前の試合に勝つためには必要なことだと思った。
一方で、これでは伊藤、ひいては若手選手は育たないだろうなとも感じた。

この流れに至った経緯を振り返ろう。

昇格即スタメン

宮﨑が離脱して以降のベイスターズは、サードのポジションで苦しんでいた。
倉本が12打数2安打、柴田は開幕以降無安打。
そこで白羽の矢が立ったのが、伊藤裕季也だった。
ファーム直近5試合で19打数6安打と3割超え。

その伊藤を昇格させ、即スタメンとした。
ベイスターズはあまり「昇格即スタメン」をやらない。
その中での起用は、ある種「緊急事態」を物語っていた。

さて、伊藤に期待するのはもちろん「結果」だが、彼は「育成」が必要な選手でもある。
その意図もあったか、嶺井の打力への期待もあったか、打順は8番でのスタートとなった。

しかし、一番負担がかからないはずの8番という打順で、相次いで伊藤にはチャンスが回ってきた。

2回裏 一死1塁

ソトが先制タイムリー、さらに嶺井もタイムリーで続いた場面。
伊藤はショートへの併殺で流れを切ってしまう。
併殺以外ならという場面だった。一番良くない結果となった。

4回裏 二死2,3塁

牧、ソトが出塁、大和が犠打。嶺井は三直。
伊藤は2打席目もショートゴロ。
3回表に逆転を許したが、1点取れば同点に追いつく状況。無死1,2塁から始まった、なんとしても点を取りたかったイニング。しかし、取れなかった。さらに印象が悪くなってしまった。

では、6回裏の場面に戻ろう。

6回裏 二死1,2塁の場面

バッター伊藤裕季也のところで、代打藤田

勝つための代打

三度ランナーを塁におき、伊藤にチャンスが回ってきた。
しかしベンチはここで「勝負手」を打つ。代打藤田。
結果としてここまで2打席で「流れを切っていた」伊藤には荷が重い。そう判断されたのだろう。
打席の内容も悪かった。「結果が欲しい」あまりの焦りが見て取れた。
打ちたい気持ちが強すぎて、簡単に追い込まれてしまう。そして自分の強みを出せずに凡退。

この試合に「勝つため」に、代打を送る。それは何も間違っていない。

育成する難しさ

結果として伊藤は2打席で今日の試合を終えた。
若手が代打の1打席で結果を出すのは難しい。そこに来てのスタメン起用。チームがなにか変わるか?と私は少し期待した。
しかしたった1打席増えたところで、ほぼ何も変わらない印象を受けた。

普段「昇格即スタメン」をやらないチームが、それをやることにまで変革を強いられている状況。
冒頭にも書いたが、いわば「緊急事態」において「流れを変えてくれ」と託した若手を、結局は我慢して使い続けられない。

「結果を出さなきゃ代えられる」という思いが「焦り」を生んでいる。
「8番」で起用され、気楽な気持ちで試合に望めるのかと思いきやそうはならなかった。
そこで2打席で見限ってしまっては、今後もさらなる焦りを生むだけだろう。
野球の打順で考える、いわゆる普通の「8番打者」にチャンスで代打を出すのは当たり前のことだ。
しかし、「育成枠」にある選手に対してその場面で代打を出してしまうことは、その選手の成長には繋がらないように思えた。

ただ私の言うように「我慢して使った」として、その先で選手が開花する保証は何もない。
我慢して若手を使った結果、試合に負け続け、さらにその選手も育たず何も得られない可能性だってある。

しかし、スタメンに起用したなら腹をくくって心中するぐらいの方針を私は望んでいる。
せっかく変化の兆しが見られ、変化出来るタイミングなのに、結局は今まで通りのことをやってしまうことに、少し失望してしまう。

結果

何度も言うが、あの場面での代打は何も間違っていない。
私が監督だったとしても代打を出しただろう。
そもそも伊藤が先の2打席で結果を出していれば、代えられることはないのだから。
焦ってようがなんだろうが、それを自身で力に変えることが出来た選手だけが1軍に残れるし、レギュラーになれる。
それに至る選手がなかなか出てこない。それだけのことだ。

多くの若手選手が、この壁を超えられずに苦悩している印象がある。
1軍に上がっても代打で結果を出せず、ファームとの往復生活。
代打で1軍帯同する若手も、調子の維持が出来ずに苦しんでいる。
結果として「全員がそろって結果を出せない」という、選手間の競争にとっては最悪の事態が生まれてしまっている。それもどのポジションでも何年にも渡って。
そうなってしまった際に、そのポジションのレギュラーになるのは大抵の場合「新戦力」だ。
最もわかりやすいのは「牧」だろう。

しかし、新戦力には限りがある。
競争の中で既存の若手が伸びて結果を出せないと、チームは強くならない。
より多くの選手、特に若手選手が「結果」を出す環境をどう作るのか。
「目の前の試合に勝つ」、しかし将来のために「育成」もする。
この両立はスポーツチームにとって永遠の課題だろう。
解決したチームは、優勝に大きく近づく。

これは伊藤に限らず、ベイスターズの若手選手の多くが囚われている呪縛と言ってもいいかもしれない。
チームとして、流れを断ち切ってくれることを願う。